相続手続き

   愛する家族を失った悲しみは人生で経験する辛いことのなかでも一番強いものです。愛する人がもういないという現実を受け止めるのには時間がかかります。そのように感情が追いついていかない中で様々な手続き等を完了していくことも求められます。役所に届ける手続きの多くは期限が設けられています。

   資産がある場合の相続の手続きはこれらがある程度落ち着いてから取り掛かります。遺産額が大きく相続税※1が発生する場合10か月以内に申告する必要がありますが、そうでなければ慌ててことを進める必要はありません。かといって先延ばしにすることはできません。

   民法では相続された遺産は遺書で指定されていない限り、一旦法律で定められている相続人※2全員のものになります。みんなのものなので自由に扱うことができません。それで遺産をどのように分割したのかを全員一致で書面にすることが求められます。この書面が証明となり、口座の解約※3や不動産等の資産の名義変更ができるようになります。

   戸籍から相続人の範囲を確定し、資産の範囲を確定します。その後相続人間で配分4を話し合い、合意したことを書面にします。法律で一応相続分が定められていますが、それに関わらず自由に配分することが可能です。話がまとまらない場合は弁護士に依頼し家庭裁判所へ申し立てをします。相続人間で円満に合意できるものに関しては行政書士がサポートできます

脚注資料

※1 相続税

   相続する財産の課税価格から基礎控除を超えると相続税が発生します。基礎控除は3000万円+600万円×法定相続人の数です。例えば法定相続人が配偶者と子供2人の場合は3000万円+600万円×3=4800万円です。

※2 法定相続人(民法900条)

配偶者常に相続人
配偶者と並び最優先で相続人(実子、養子、嫡出問わず)
亡くなられた方の両親第二順位の相続人(亡くなられた方に子がいない場合)
兄弟姉妹第三順位の相続人(亡くなられた方に子も親もいない場合)

※3 預貯金に関して

   亡くなられた方の預貯金は死去後ただちに凍結されるわけではなく銀行が死去の事実を把握した時点で凍結されます。振込先の変更等、口座に関係するものは銀行に通知する前に対応する必要があります。なお、この預貯金から葬儀等の死去に関連した費用を支出することは認められています。また、最近の法改正により上限150万円を限度として遺産分割前に裁判所の判断を経ることなく払い戻す制度が設けられています。(民法909条の2)(平成30年法務省令第29号)(大阪高裁平14・7・3)

※4 法定相続分(民法887条 890条)  

配偶者と子の場合配偶者2分の1子2分の1
配偶者と亡くなられた方の両親配偶者3分の2 両親3分の1
配偶者と亡くなられた方の兄弟姉妹配偶者4分の3 兄弟姉妹4分の1