これからの一人親方のかたち

国交省により一人親方の実態調査の結果と今後の取り組みの道筋(案)が公開されました。
  参考資料:第7回 建設業の一人親方問題に関する検討会

一人親方は確かな技術と経験で建設業にはなくてはならない存在です。
一方で雇用労働者との線引きがあいまいになっている現状を国と業界団体が問題視しています。

一人親方は、下請からの指揮監督や拘束性がなく、報酬は完成物に対して支払われます。
調査では半数近い一人親方が仕事の裁量が低く雇用労働者に近い働き方をしている現状となっています。

2024年からの時間外労働規制とあいまって、技能労働者の処遇改善や人材確保のために適正な一人親方をサポートしていく取り組みが本格化します。

一人親方は法的には雇用された労働者(労務提供が目的)ではありません。一人であっても下請と対等な事業者です。

それで、見積書にもとづいて書面で契約すること必要です。(建設業法19条)
調査では、66%の建設業者が一人親方との契約の際に見積の提出や書面での契約ではなく、口頭での契約となっていることも問題視されています。
このような契約では法的には「適正な一人親方」とはいえず、実態は労働者ということになります。

見積には必要経費として資機材費等また福利厚生費も計上します。請負額500万円を超える場合は建設業許可が必要です。(材料の運送費等また消費税もすべて含めます。*)

時間外労働上限規制が建設業にも適用される2024年問題とあいまって規制逃れの一人親方が増えることを国も業界団体と危機感を募らせています。
今後はCCUSでの適正な一人親方がどうかのチェックの義務化が現実味を帯びてきています。

とはいえ、適正に働く一人親方にとってはむしろ他と差別化をはかるチャンスとなるかもしれません。
すでにCCUS登録は全技能者で原則義務化されています。(罰則を伴う強制力がないため普及に時間がかかっています。)

これから徐々に締め付けが厳しくなり、登録業務に相当な時間を要するようになることが予想されます。現在でも一から登録しようとすれば早くて1ヶ月強かかっています。レベル判定まで含めればさらに時間がかかります。

元請から言われてから動き出すのでは、一定期間現場入場ができなくなるという実害が発生する可能性があります。
CCUSカードは遅かれ早かれ必須のものになります。
先手先手で対策をされることが、これからの建設業界を乗り切る秘訣といえそうです。

                                                                文責:行政書士 長友紀典

*許可が不要な工事は請負額500万円未満の軽微な建設工事のみです。
軽微な建設工事(建設業法施行令1条の2)  注文者が材料を提供する場合においては、その市場価格又は市場価格及び運送費を該当請負契約の請負代金の額に加えた額により、判断する。
注文者定義(建設業法2条5)  元請負人とは、下請契約における注文者である建設業者であるもの(つまり、上の場合の注文者とは発注者ではなく一人親方と契約をする元請です。)